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群馬県立館林美術館 かこさとしの世界展 [群馬]

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毎年新しい絵本が発刊されますが、戦後すぐからの歴史あるシリーズ物の絵本もたくさんあります。もちろん、外国で描かれたものもありますし、日本で作られたものもあります。そこには独自の世界観と魅力的なキャラクターが登場することが多いです。

たとえば、アンパンマンももともとは絵本です。誰しもが知るキャラクターはほぼ右に出るものはないでしょう。それ以外にも馬場のぼる氏の11匹のねこや岩村和夫氏のノラネコぐんだんなど多数が思い出されます。今回展示のテーマになっている、かこさとし氏も長いキャリアのあった絵本作家で、だるまちゃんシリーズやからすのパンやさんが人気シリーズとなっています。

しかしながら、かこさとし氏はもともと絵本作家を目指していたわけではないんですね。驚くことに東大出身で初めは化学系企業に就職していたそうです。初期の作品は本業の傍らで副業として生まれたものなのだとか。それが戦後すぐの福祉活動で子どもたちと触れ合うことに生きがいを見つけ、絵本作家として作品を作るようになりました。

かこさとし氏のだるまちゃんシリーズの作品は日本に伝わる伝説をテーマにしたものが多いのが特徴です。雷神が現れたり、天神が現れたりして、独特のストーリーが展開していきます。子供に対して分かりやすい物語を作ろうと思うと、だいたい似たようなテーマになってしまうため、先に優れた作品を発表した人は強いですね。このシリーズは人気作品となりたくさんの続巻が作られました。

展示ではこうした有名作品だけでなく、マイナーな作品も展示されています。水についてや土についての絵本もあり、自然が大事なものであることを子どもたちに訴えています。SDGsをもてはやす今の社会には最適な作品かもしれません。

絵本はその背景に伝えたい何かがあるのだと思います。特にかこさとし氏は賢い人であるので、キャラクターが楽しいストーリーを展開しているその裏に、特別な思いが込められているように感じます。今回の展示を通して氏が何を考えて、社会に何を訴えたかったのか少し伝わってきたように思えました。


群馬県立館林美術館 かこさとしの世界展

~12/25(月休) 9:30~16:30 一般830円 高大生410円

最寄りバス停は広域公共路線バスの県立館林美術館前などです。

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群馬県立館林美術館 野口哲哉展 [群馬]

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現代を代表する芸術家の一人と言っていいと思いますが、野口哲哉という人がいます。作品は非常に特徴的なもので、鎧具足をまとった人物が現代の事象と融合する面白いものを発表しています。例えば、甲冑を身に着けながらスニーカーを履いていたり、手提げかばんを提げていたり、ダンボール製の翼をまとっていたり。侍の世の中が続いていたら、もしかしたら現実に存在していた景色なのかと思わせられます。山口晃が絵画の世界で古典と現代の融合を図って表現しているとしたら、野口哲哉は立体的に融合して見せていると言えるかもしれません。

発想もさることながら、そのリアルな造形に驚きます。今にも動き出しそうです。どうしても甲冑を着た人物という外観に注目してしまいますが、作者が伝えたいことはむしろ中身(内面)であるということが説明書きから伝わります。

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どの作品もどことなく哀愁をかかえるように見えます。何を考えているのか気になります。つまり、現代人が抱えるものと同じものが、戦国時代や江戸時代の武者も持っていたというのです。そうした時代を超えた悩みのような感情を作者は表現したいのでしょう。ですので、今回の特別展の題名は「this is not a samurai」であり、侍という外見ではなく、ヒトという内面を表現したいとしています。現代と過去の融合の面白さを喧伝することで観客を呼び込んでおきながら、実際に作品に対峙するとその真相(深層)を別な形で提示する。なかなか賢い芸術家であるように感じました。ともあれ、作品の面白さは間違いないです。

夜に携帯電話の光に照らされた様子にレンブラントやフェルメールの光の使い方を模して絵を描いたり、侍と見られる人物が新型コロナウイルス対策と思われるマスクをしていたりとオマージュや風刺もありました。

会場には様々な作品が並んでいて、立体物は360度から見ることができます。というか、見ないと損です。あらゆる角度から見てもきちんと作り込まれています。プラモデルを模した作品は箱書きまで読まないともったいないでしょう。そして、最後の部屋はなんと沢山の作品が整然と並べられていて、それらが全て撮影可能です。アートをアピールする上でも、現代はSNSで公開する力が重要だと考えられます。そういった意味でも、若い感性が光ります。アートを楽しませる方法を知っていると感じました。

野口哲哉展は特別展示室で開催されていますが、実は1作品だけ別室に存在します。それは、フランソワ・ポンポンの像で、これは展示室1の彫刻の部屋で特別公開されています。髭を蓄えたフランソワ・ポンポンは館林美術館が一押しの芸術家ですが、美術館と野口哲哉の独自のコラボレーションなのでしょう。面白い試みです。

数々の面白い作品を作っている野口哲哉ですが、どこかの街角で立体作品として像を立ててもいいと思うのですが、そうした試みはなされないのでしょうか。


群馬県立館林美術館 野口哲哉展

~9/5(月休、8/10休、8/9,16は開館) 9:30~16:30 一般830円 大高生410円

最寄りバス停はつゝじ観光バスの県立館林美術館前です。

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館林美術館 安野光雅 風景と絵本の世界 [群馬]

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やっとの梅雨明けで本格的な夏がやってきました。

このような暑い日には美術館が最適なのですが、今年の美術館は例年と様子が異なります。

それは入館に際して、検温が求められるのです。

手の消毒と検温を済ませて初めてチケットを購入できます(体温は36.0℃でした)。

館林美術館ではさらに連絡先の記入が必要でした。

これも新型コロナウイルス対策としてやむを得ないところです。


今回の展示は絵本作家の安野光雅氏の作品展です。

海外旅行の際のスケッチから、不思議な作風の絵本の絵、そして植物を描いた作品などが並んでいました。

安野さんの作品はストーリーに含蓄があるというよりも、発想に独創性を感じます。

鏡面像を描いたり、考え方の矛盾を捉えたり、思考実験の延長線上の作品のように見えました。

日本のエッシャーとも言えるかもしれません。

作品によっては「ウォーリーをさがせ」のように見えるものもありました。


そもそも絵本に注目した背景が面白いです。

津和野で生まれ育った安野さんは、地元の人が方言で会話する中、標準語で書かれた絵本の中にのみ外の世界とのつながりを感じたそうです。

絵本が別な世界とつながるツールになるとは、それだけでも面白い発想です。

(この場合の“世界”は空想の中の世界という意味ではなく、地元以外の社会という意味での“世界”です)

そして転機は東京で教員をしているときに、教え子に福音館書店の社長の息子がいたことでした。

絵がうまいだけでなく、このような運の良さがないとなかなか人生がうまくいきませんね。

この幸運を物にしたからこそ、数々の絵本を世に残すことができたのでしょう。

古さを感じさせない不思議な絵本の世界は永遠に語り継がれるでしょう、もっとも文字や言葉は絵本のメインではありませんけれど。



館林美術館 安野光雅 風景と絵本の世界

~9/22(月休) 9:30~16:30 一般620円 高大生310円

最寄りバス停は館林市営バスの県立館林美術館前です。

本数が少ないのでご注意ください

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伊勢町祇園祭 [群馬]

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吾妻渓谷に隣接する中之条町で伊勢町祇園祭が開催されました。

この祭りでは通りを歩行者天国にし、3代の山車が巡航します。

その他にも地域の人々が露店を構えたり、ステージショーを行ったりします。

印象としてはお年寄りよりも子供を含む若い世代が多い感じでした。


巡航した上之町や下之町の山車は最上部に歌舞伎の「暫」や「鏡獅子」の人形を備え付けています。

鏡獅子のものなんかは本当の人間が立っているかのような作りでした。

それらの山車がお囃子の音を響かせながら、日中は伊勢町の通りを2往復しました。

面白いのは伊勢町の通りが西に向けて坂になっているため、西行きは重そうなのですが、東行きはブレーキをかけて山車が暴走しないように調節しているのです。

ブレーキ一つでも熟練の技です。

ブレーキ付きの山車は一般的なのでしょうか。


そんな巡航ですが、途中から残念なことに夕立に見舞われました。

突然の大雨に巡航は止まり、人形などにビニールを被せる作業が行われました。

本体の周りも透明シートが掛けられていました。

その後、すぐに雨が上がったのですが、天気が安定しないと大変ですね。


上にも書いた通り、とても若い人たちが目立つ祭りです。

特に下之町のお囃子をしている若い子には見入るものがありました。

表情一つ変えずにひたすら打ち続け、頭が手を動かしていると言うよりも、体がお囃子を覚えて勝手に叩いているかのようでした。

その無表情さは神々しささえ纏っていました。

祭を行うということには大変な部分も多いと思われますが、そうした普通の人には真似できない雰囲気が身につくと言うことは、これまで小さいときから参加して培って来たが故でしょう。

そういう意味で、祭りを伝えていくことの凄さや羨ましさも感じました。


ちなみに今回訪れたのは伊勢町祇園祭ですが、直ぐ隣の町内には中之条祇園祭があり、8月に開催されます。

一つの祭りに統一しないことから、競争意識やプライドを感じます。



伊勢町祇園祭

9/1,2(2018年実績)

最寄り駅は吾妻線の中之条駅です。


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群馬県立歴史博物館 織田信長と上野国 [群馬]

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群馬県立歴史博物館が先日リニューアルしました。

リニューアル前はさほど特徴がなく広くもない博物館の印象がありました。

ところが、今回リニューアル後に初めて足を踏み入れてみたところ、全く印象が変わりました。

綺麗かつ展示が分かりやすくなっていました。

常設展示も以前はこんなにもあったでしょうか。

あまりの濃度の濃さに、予定した時間では古代までしか見ることが出来ませんでした。

常設展示を見るためだけに出直さねばならないと思わせるほどの魅力に溢れていました。


さて、今回の展示は上州なのに織田信長展です。

織田信長展と銘打つ割に織田信長本人はほとんど登場しません。

しかしながら、織田信長がいないことに落胆する感じは受けませんでした。

展示の構成は3つに分けられ、

①織田信長と敵対した上州勢

②織田信長の領国としての上州

③織田信長の子孫たちの統治

と言ったところです。


①は主に小幡氏の話で長篠の合戦で織田信長に刃を向けて戦ったことが中心です。

②は滝川一益の話です。

最終的に本能寺の変後の神流川の戦いで敗走して織田家の領地は北条氏に奪い取られてしまいました。

③は織田信長の息子の信雄の系統が、甘楽郡の小幡藩を治めていた時代です。

さして業績があるわけではありませんが、楽山園の造営は風流な大名家の名残を感じさせます。


この展示の最大の面白さは床が展示の一つになっているところです。

上記の長篠の戦いと神流川の戦いの地図が床一面に描かれ、武将の動きや合戦の位置などが解説されています。

常設展もそうですが、発想が柔軟でリーフレットを含め来館者を楽しめる取り組みが多数用意されています。

前もって幾許かの情報を仕入れていれば時間的なゆとりを持って訪れたものを。

急ぎ足で体験もそこそこに見ねばならないことを残念に思いました。


その他、テーマ展として土岐氏の話も特集されています。

これはこれで十分内容が濃いものでした。


想像以上の展示量でした。

朝昼晩の三食のごはんを一度に食べてしまったような満腹感です。

群馬県立歴史博物館をあなどるべからず。



群馬県立歴史博物館 織田信長と上野国

~5/13(月休) 9:30~16:30  一般600円 大高生300円

最寄りバス停は高崎市内循環バスぐるりんの群馬の森です。

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赤岩渡船で越境 [群馬]

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公共交通と言えば、誰しも電車やバスを思い浮かべ、 船を挙げる人は少数ではないでしょうか。

それでも瀬戸内海や北海道、そして離島を中心にフェリーも公共交通として頑張っています。

それらは船の中でも日の当たる部分に相当するもので、もっと地域密着の交通を担っているものもたくさんあります。

その一つが渡船です。

昔は全国各地に多数の渡船があったことでしょう。

しかし、今では殆ど見られなくなってしまいました。

そんな渡船が利根川にも現役であるのです。

その一つがこの赤岩渡船です。

埼玉県熊谷市と群馬県千代田町を結ぶもので、県道扱いで乗車は無料です。

今回は埼玉県側から群馬県側へと抜けました。

 

熊谷駅前から葛和田行のバスに乗り、終点で降ります。

道は渋滞もなくスムーズに流れ、乗客の乗り降りも結構見られました。

葛和田は土手を越えた利根川河川敷内のバス停で、そこには渡船用の小屋が設置されています。

ここで対岸から渡船を呼ばなければなりません。

バスの運転手に聞くと、小屋脇のポールで旗を掲げろとのことでした。

黄色い大きな旗を縄で上げていくのですが、生憎の強風のためすぐに落っこちてきてしまいます。

何回か繰り返すうちに、対岸から船がやってきました。

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「旗を掲げて合図しろ」との話は知っていたのですが、想像よりも大きな旗です。

てっきり手旗みたいなものを降ってアピールするのだと思っていました。

それにしても、よく気付いてくれたものです。

 

当日は強風のため波が高いだけでなく、船はカイトボード(?)の人らを避けつつこちらに向かってきました。

よくもぶつからないものだと思いましたが、それでも何度も減速や進路変更をして難渋しているようでした。

さて、実際に乗ると、思いの外安定です。

しかも、なかなか快適です。

ほんの数分でしたが、貴重な体験でした。

船員の方の話を聞くと、あまりの強風のため運休にしようと話をしていたところだったようです。

危ないところでした。(運休の場合は小屋に赤い旗が立つそうです。)

また、利根川にはここ以外に伊勢崎市と取手市に渡船があるそうです。

しかし、船に乗って県をまたげるのは赤岩渡船だけです。

そんな貴重な赤岩渡船に末永く残って欲しいところですが、手間や利便性の観点から明るい未来は見えてきません。

千代田町では架橋要望があるらしく、実現すれば赤岩渡船は無くなります。

地域の個性として存続して欲しいところですが、コストや住民の使い勝手を考慮するとそんな希望は難しいのかもしれません。

赤岩渡船があるうちに、多くの人に体験してもらい、渡船の面白さを伝えていってほしいと感じます。

 

さて、この日は渡船で群馬県に入った後は、千代田町営バスで館林駅へと向かいました。 

 

赤岩渡船

8:30~16:30  無料

最寄りバス停は埼玉県側は国際十王交通の葛和田です(およそ毎時1本)。

群馬県側は千代田町営バスの赤岩渡船です(日に数本)。


七日市藩陣屋跡 [群馬]

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富岡製糸場から西へ少し離れた地の、商店がまばらになった所に七日市藩の旧跡である藩邸が残っています。 

七日市藩は江戸時代を通して前田家の分家が治めており、建物にも前田家の梅鉢紋が見られます。

この藩邸の特徴は富岡高校の敷地内に立っているところで、高校内にありながらも観光客も自由に訪れることができます。

通常の高校の校舎が立つ敷地の北東の片隅に藩邸とそれを囲む庭が配され、それぞれの様相が異なっているのが面白いところです。

庭は手入れも行き届いており、池には鯉が泳いでいました。

 

高校敷地内にあることから昭和の半ばには学生の悪さによって破壊されたりしたのでしょうか。

はたまた平成初期には授業をサボった学生が藩邸に侵入して居眠りをしていたなんてことも無かったのでしょうか。

高校にあるというだけで物語が膨らみます。

ただ、綺麗に伝えられている様子を見ると、大切にされていることは窺えます。

 

訪れた日はたまたまかも知れませんが、学生の声の無い静かな日でした。

もしかすると、高校にある異型の存在の藩邸なのではなく、藩邸という空間にある、異質な存在の高校という方が正しい認識なのかもしれませんね。

こうした歴史的なものが身近にあることは羨ましいですね。

藩邸が登場する青春物語を、大切に持ち続けて成長してほしいものです。

 

七日市藩陣屋跡

拝観は高校開門時間内。 

最寄り駅は上信電鉄の七日市駅です。 


富岡製糸場 [群馬]

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富岡製糸場が世界遺産になった時はだいぶ賑わいました。

多くの人が感じたように、「あの施設が世界遺産?」と思いましたが、日本人が考えるより世界での評価が高いということでしょう。

指定直後のフィーバーが落ち着き、今は比較的ゆとりを持って見ることができます。

もっとも、これでも以前の状態に比べればだいぶ人が多いのでしょうが。

 

施設が世界遺産指定を受けたため整備が急ピッチで進められています。

展示施設内も空調が効き、夏でも穏やかに見て回れます。

もちろん昔の機械を展示している施設にはそうした空調は備えられていませんが、解説ビデオは大画面で複数の場所に置かれていました。

そして、何よりも東京都心で導入されるようなハイテクなシステムがたくさんあります。

涼しくするためのミスト発生装置もあちらこちらにありますし、解説ツアーの発券機は無人の自動発行機です。

門前の商店街も華やかに変わりつつあるようで、また数年経てば様相が一変しそうです。

 

富岡製糸場は想像通りに観光客の年齢層の高い施設ですね。

展示解説も難しいですし、もともと工場ですから。

歴史の移り替わりごとに増改築され今の姿になりました。

上の写真の首長館は富岡製糸場設立に関わったお雇い外国人のポール・ブリュナの住居だった場所で富岡製糸場でも屈指の古い建物です。

庭を挟んで直ぐの所には鏑川が流れ、一番景色のいいところに建てたものと想像されます。

ポール・ブリュナは上州のからっ風をどう感じたのでしょうか。

それ以外にも診療所や男子寮など通常の主要な見学コースから外れたところも面白いもので溢れています。

 

もちろん、生糸関連の実演もあり生糸を紡ぐ様子や生きた蚕を見ることができました。

個人的には蚕の幼虫よりも成虫を見たいのですけれど。

 

季節や時期が違うとまた違った様子が見られそうですし、どんどん整備もされているようですので再度訪れても十分楽しめそうです。 

ただ、世界遺産指定を受けて海外からの観光客が大量に来ているとは思うのですが、あまりに外国語の案内が無いことが心配です。

解説ガイドが貸し出されるようですが、それでもパネル展示くらいには英語案内を付けたほうが良いとは思うのですが。

 

富岡製糸場

9:00~16:30 一般1000円 高大生250円 

最寄り駅は上信電鉄の上州富岡駅です。 


桐生明治館 旧群馬県医学校兼衛生所 [群馬]

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今年の大河ドラマは長州が中心の幕末の物語ですが、群馬県もゆかりの地として売り出しています。 

なぜならば、主人公の杉文(井上真央)の再婚する相手の楫取元彦(大沢たかお)は明治維新後群馬県令として赴任するからです。

展示施設を開設して宣伝紙などを発行していますが、あたかも楫取元彦が大河ドラマの主人公であるかのようなもので突っ込みを入れたくなるものになっています。

 

そんな群馬県が誕生して間もなくの時代の建物の一つが桐生市に現存しています。

現在の名称は桐生明治館となっていますが、もともとは群馬県の衛生所兼医学校として前橋市の県庁前に造られたものです。

その後両施設は廃止され、建物は移築して相生村役場として使われてきました。

そして最近、建築当時の姿に復元され、かつ重要文化財指定され今に至ります。

建物は和洋折衷の作りで、一見洋館の様な外観をしていますが、屋根には鬼瓦が設置されています。

また、中は広くはないのですが、壁や天井が紙張りとなっている点が特徴的です。

冒頭の写真は会議室の椅子に腰掛け、窓を覗いた体で撮った写真です。

当時の人たちもこのような風景を見ていたのでしょう。

現在は復元から年月が経ち、再度老朽化を感じさせる部分が出てきていますが、足下の床板の擦れや塗装の色あせが逆に時代を感じさせ興があるように思われます。 

 

さて、明治維新とともに各地に医学校が作られたそうです。

しかしながら、群馬県の医学校は応募人数が少なく数年のうちに閉鎖されてしまいました。

医者の人気はなかったのでしょうか。

当時のシステムについても紹介されていました。

入試は理系的分野の試験が無く、当時から問題視されていたようです。

また、奨学金の制度もあり、今と同様に貸し付けられた学生は卒業後に公的な診療を義務づけられていたようです。

戦後に構築された医学部の制度にもよく似て、問題としていまだ改善されていない学力の点にも通じる話が既に明治維新の段階で生じていたというのですから驚きです。

人は進歩しているようで、同じところで足踏みをしているだけなのかも知れません。

 

桐生明治館

9:00~17:00 150円 月曜日、祝日の翌日休館 

最寄りバス停は桐生市おりひめバスの桐生明治館前です。

(最寄り駅はわたらせ渓谷鉄道などの相老駅や上毛電鉄の天王宿駅です) 


足尾鐵道100周年記念資料展 [群馬]

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足尾鐵道とは今のわたらせ渓谷鉄道のことです。

これが2014年に全線開業100周年を迎えました。

そこで関連する資料を展示した企画がこのイベントです。

会場では資料展示の他に模型の展示・走行も行われていました。

貴重な絹地の特別乗車券や写真パネルなど足尾鐵道からわたらせ渓谷鉄道に至る様々な歴史資料も公開されていました。

また、足尾鐵道開業時の公文書はなかなか目にすることはないのではないでしょうか。

それを見ると、免許の第1条には政府が必要と認めたときは国有化すると書かれています。

その文章が表す通り、開業から4年目にして国が買い取り国鉄足尾線となるわけですが、買収前提で免許交付が行われていたのか、未来を予測する力があったのか興味深いところです。

また、開業に先立ち岸氏と本間氏の二人の技術者による二つの経路の提案があったことも示されています。

もし違う選択をしていたら、今とは違う経路で桐生へ線路が出来ていたのかも知れません。

 

小さな会場の小さな展示で内容も不完全な物でしたが、まだ伸び代がある調査領域で今後より一層の進展が見込める所であると感じます。 

もっとも、レイアウトはもう少し整理した方が見やすいかも知れませんが。

会場でわたらせ渓谷鉄道の“神戸駅”の名前が昔は“神土駅” であり、そちらの方が良かったとおっしゃている方がおりましたが、表記としては“神戸駅”の方が正しいのですから、この変更は仕方がありませんね。

ちなみにこの駅の読みは「ごうど」駅です。

 

足尾鐵道100周年記念資料展

~2/8 10:00~17:00 無料

最寄り駅(展示会場)は 両毛線の桐生駅です。