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群馬県立館林美術館 野口哲哉展 [群馬]

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現代を代表する芸術家の一人と言っていいと思いますが、野口哲哉という人がいます。作品は非常に特徴的なもので、鎧具足をまとった人物が現代の事象と融合する面白いものを発表しています。例えば、甲冑を身に着けながらスニーカーを履いていたり、手提げかばんを提げていたり、ダンボール製の翼をまとっていたり。侍の世の中が続いていたら、もしかしたら現実に存在していた景色なのかと思わせられます。山口晃が絵画の世界で古典と現代の融合を図って表現しているとしたら、野口哲哉は立体的に融合して見せていると言えるかもしれません。

発想もさることながら、そのリアルな造形に驚きます。今にも動き出しそうです。どうしても甲冑を着た人物という外観に注目してしまいますが、作者が伝えたいことはむしろ中身(内面)であるということが説明書きから伝わります。

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どの作品もどことなく哀愁をかかえるように見えます。何を考えているのか気になります。つまり、現代人が抱えるものと同じものが、戦国時代や江戸時代の武者も持っていたというのです。そうした時代を超えた悩みのような感情を作者は表現したいのでしょう。ですので、今回の特別展の題名は「this is not a samurai」であり、侍という外見ではなく、ヒトという内面を表現したいとしています。現代と過去の融合の面白さを喧伝することで観客を呼び込んでおきながら、実際に作品に対峙するとその真相(深層)を別な形で提示する。なかなか賢い芸術家であるように感じました。ともあれ、作品の面白さは間違いないです。

夜に携帯電話の光に照らされた様子にレンブラントやフェルメールの光の使い方を模して絵を描いたり、侍と見られる人物が新型コロナウイルス対策と思われるマスクをしていたりとオマージュや風刺もありました。

会場には様々な作品が並んでいて、立体物は360度から見ることができます。というか、見ないと損です。あらゆる角度から見てもきちんと作り込まれています。プラモデルを模した作品は箱書きまで読まないともったいないでしょう。そして、最後の部屋はなんと沢山の作品が整然と並べられていて、それらが全て撮影可能です。アートをアピールする上でも、現代はSNSで公開する力が重要だと考えられます。そういった意味でも、若い感性が光ります。アートを楽しませる方法を知っていると感じました。

野口哲哉展は特別展示室で開催されていますが、実は1作品だけ別室に存在します。それは、フランソワ・ポンポンの像で、これは展示室1の彫刻の部屋で特別公開されています。髭を蓄えたフランソワ・ポンポンは館林美術館が一押しの芸術家ですが、美術館と野口哲哉の独自のコラボレーションなのでしょう。面白い試みです。

数々の面白い作品を作っている野口哲哉ですが、どこかの街角で立体作品として像を立ててもいいと思うのですが、そうした試みはなされないのでしょうか。


群馬県立館林美術館 野口哲哉展

~9/5(月休、8/10休、8/9,16は開館) 9:30~16:30 一般830円 大高生410円

最寄りバス停はつゝじ観光バスの県立館林美術館前です。

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