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MOA美術館 井上涼展 夏休み!BYOBUびじゅチュ館 [静岡]

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Eテレの番組「びじゅチューン」を作っている井上涼さんは、音楽や美術、映像作品などあらゆる領域の芸術を融合させた作品を作っています。

題材は日本や海外の芸術作品で、それを独特の曲に合わせてアニメにし、5分番組を作っています。

その作品の中に「紅白梅図屏風(尾形光琳)」をモチーフとしたものがあるため、所蔵するMOA美術館での今回の企画展の運びとなったようです。


まず、美術館の玄関に着くと巨大なエントランスが待ち受けています。

入るといかにも美術館な作りなのですが、そこから延々と上へエスカレーターが続いています。

一度乗り換え、二度乗り換え、三度乗り換え、それでもまだ展示室に着きません。

途中、万華鏡の現代アートが飾られたスペースを抜けさらに何回かエスカレーターを乗り継ぐと、やっと美術館本体に到着します。

よくも山の上に作ったものだと感心してしまいます。


展示では、井上涼関連の作品の前にMOA美術館が所蔵する美術品が公開されていました。

その錚々たる作品の素晴らしさは筆舌しがたいものでした。

すべての作品が一流の人たちのものです。

絵画は横山大観や菱田春草、今尾景年、川瀬巴水などなど。

陶芸は板谷波山、彫刻は平櫛田中といったものが整然と並んでいました。

ただスゴイの一言です。

同様な分類の作品で並んでいなかったのは下村観山ぐらいでしょうか。

別室には国宝の「色絵藤花文茶壺(野々村仁清)」も飾られていました。

これは井上涼作品の中にも登場するのですが、思いの外鑑賞者は少なかったように思います。

このような素晴らしい作品を一堂に見られて、それだけで十分のようにも感じましたが、メインはこれらではありません。


階下に進むと、今回のメインである井上涼作品関連の展示がありました。

国宝(訪問時はレプリカ)の紅白梅図屏風が飾られているだけでなく、井上涼版の「紅白梅図屏風」もあります。

これにはアニメに登場するキャラクターが一緒に描かれていました。

また、隣室には撮影に使われた小道具や特別な展示作品も公開されていました。

例えば、上記写真の鮭は、「鮭(高橋由一)」を元にした、ミラーボールです。

実際に光を反射させているのが分かりますね。

最後の部屋には井上涼さんの最新作「忍者と記憶喪失図屏風」の映像インスタレーションがありました。

典型的な美術館とは異なる異質な作品と空間が続きます。

何も知らない人がやってきていたら、なんと思ったことでしょう。

一見、一貫性のない作品群のようにも見えますが、これも現代アートの一つなのではないでしょうか。


なかなか訪れる機会のなかったMOA美術館ですが、とにかく素晴らしい作品を所蔵していることが分かったのは何よりの収穫です。



MOA美術館 井上涼展 夏休み!BYOBUびじゅチュ館

~8/27(木休) 9:30~16:00 一般1600円 高大生1000円

最寄りバス停は東海バスのMOA美術館です。

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浜松市立博物館 七科約説と浜松の医療史 [静岡]

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浜松の街を歩いていると、地下道の掲示板に「七科約説と浜松の医療史」の沢山の掲示があり、市を挙げて展示を推している様子が感じられたので試しに見に行ってみました。

以前浜松市立博物館を訪れたのは10年近く前だったでしょうか。

数年前に常設展示室の大改修を行ったそうで、ものすごく印象の良い常設展になっていました(さらにもう少し説明や解説が多いと楽しいのですが)。

また、去年の台風により博物館周囲の山林も大きな被害を受け、現在も注意書きがありました。

このように以前に比べてだいぶ変化があったようなのですが、残念ながらかつての様子が記憶になく、どう変わったのかここで表すことが出来ません。

 

さて、常設展示の奥にテーマ展示用の一室が設けられており、そこで「七科約説と浜松の医療史」展が開催されています。

この展示は浜松の医療の開祖とも言うべき太田用成の没後百年を記念して行われている物です。

太田用成は明治期に国内の医学書が少なく医学生が困っている中、アメリカで発行された「conspectus of medical science」 を訳して出版しました。

この本の普及により当時の医学教育が進展したそうです。

参考書の走りです。今で言う赤本とか黒本とかでしょうか。 

ちなみに書名の“七科”とは「解剖、生理、薬物、内科、外科、眼科、産科」 の7科目を表しています。

 太田用成は本の出版以外にも浜松医学校や浜松病院の経営なども行っていますが、経営難のためどちらも程なくして閉鎖されました。

医学の道は長けてても経営の道には通じてなかったと言うことなのか、公的機関の丼勘定が影響したのか分かりませんが現在までつながっていないのが残念でなりません。

 

展示自体は多くなく典型的な博物展です。

せっかく七科約説を大々的に取り上げているのですから中身の解説ももっと欲しかったですし、具体的にどのような書かれ方をしているのか現物を触らないにしても自由に調べることができるようになっていると良かったです。

さらには原著との比較なんてあると良かったでしょう。 

取り付きやすさのハードルの高い展示でした。 

 

浜松市立博物館  七科約説と浜松の医療史

~10/8(月休ただし除10/8) 9:00~17:00 一般300円(常設展観覧料)

博物館HPに割引券があります。

最寄りバス停は遠鉄バスの博物館です。