浮島の森 [和歌山]
新宮市は熊野古道の入り口と言われ、様々な名所があります。
そんな世界遺産にもなるような歴史ある土地に、風変わりな森があります。
住宅街に埋もれるその森は「浮島の森」と言われていますが、その名の通りこの森は浮いているのです。
入口の建物を通り、池と森の周囲から歩いて中に入ることができるのですが、鬱蒼とした様子は原始の森のようでした(写真左)。
島には環境保護のために見学者用の通路が渡してあります。
歩くとその通路がきしみ、揺れるのですが、おそらくこれは通路自体が水の上に浮かべてあるために揺れるのであって、島が動いているのではないでしょう。
むしろ、踏み込むと通路の板が揺れ動くように調整されているのかもしれません。
通り抜けてはみたものの、正直なところ森の凄さは感じられませんでした。
帰り際に受付の方に話を聞くと、昔(戦前)はもっと池が大きく、実際に日によって森の位置が変わっている様子が見られたそうです。
しかし、戦後の食糧難の時代に池が畑地へと転換され、やがて住宅街に変遷し、周囲の環境は悪化しました。
それに伴い浮島も動くことはなくなってしまったようです。
調査の結果、現状でも浮島と池の底面との間に水の層はあるのですが、岸に座礁した状態になっているそうです。
そのような状況ですから、素人が足を踏み入れて価値がわからなくても当然ですね。
むしろ、「確かに浮いていました」なんて言ってしまっては、目も当てられません。
浮島の状況が悪化しないように、水質改善などの様々な対策が取られているようです。
駐車場となっていた部分も掘削し、池の拡張の試みもなされています。
こうした、生活に必須でない部分に資金を投入できるようになったのは生活が豊かになったことの裏返しですね。
また食糧に困る時代が来れば池どころか浮島自体も潰されてしまうかもしれません。
文化を伝えるということは、そうした薄氷の上にあるように感じます。
浮島の森
9:00~17:00 100円
最寄り駅は紀勢本線の新宮駅です。