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国立新美術館 庵野秀明展 [東京]

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2021年に25年以上続いたエヴァンゲリオンが完結し、一方でウルトラマンや仮面ライダーをリメイクすることを発表して今一番注目を浴びている監督は庵野秀明氏でしょう。この展覧会はそんなタイムリーな人物を取り上げた展覧会です。今という時期だからこそ大きな注目を浴びますが、一方で存命中な人物で今後さらなる展開があることから時期尚早と評価されるかも知れません。しかしながら、庵野監督の深い作品を理解する上でもこの展示を見ておくことは避けられないと感じました。

新型コロナウイルス対策のため美術館への入館は完全予約制です。前もって予約をして希望日時の券を発券しなければならないのですが、平日や休日の一部の時間帯では現地で購入することが可能です。そうした下調べをして行ったおかげで、待ち時間ほぼゼロで観覧することができました。

会場展示の最初は庵野監督を形作った時代の話です。庵野監督の子供時代は特撮全盛期でウルトラマンや仮面ライダーなど様々な作品が公開されていました。そうした作品に登場する戦闘機やウルトラマン、仮面ライダーなどの立体資料が並びます。ウルトラマン関係は作品の写真撮影が自由なのですが、仮面ライダーは写真撮影不可でした。東映が管理しているせいでしょうか。作品に対する考え方の違いが垣間見られます。

次に庵野監督の学生時代の作品のコーナーが続きます。巷で有名な庵野監督がウルトラマンになりきる特撮作品も会場で公開されていました。庵野監督の顔出しウルトラマンが怪獣と戦う作品で、見方によっては馬鹿げた作品を生真面目に作っているように見えるのですが、カメラアングルや小物の作成などは本格的で、ウルトラマンという作品の背景にある“ステレオタイプ”とは何かを表現しているように感じます。

このように特撮からスタートしているのですが、アニメ作品の技術も優れたもので、そこから数々のアニメ作品に特異な技術を織り込んでいきました。「風の谷のナウシカ」での巨神兵のシーンなどは有名なところです。そして、「トップをねらえ」や「ふしぎの海のナディア」、「新世紀エヴァンゲリオン」といった作品が発表されていくわけです。個人的には、特に「トップをねらえ」の最終話の白黒表現や「エヴァンゲリオン」のTV版最終の心象世界表現などの異質な表現に惹かれたのですが、今回の展示ではそれについての説明などの新しい情報はありませんでした。

「エヴァンゲリオン」のヒット後は少女漫画の「彼氏彼女の事情」の映像化をしたり、実写作品の「ラブ&ポップ」を作ったりしていました。セーラームーンのセーラーウラヌスやネプチューンの変身シーンを手掛けたりもしていたんですね。そして、再び「エヴァンゲリオン」へと回帰するのですが、そこには制作する理由が簡単に説明されていました。旧劇場版はアニメ版できれいに完結しなかったことを批判されたことから、それに応える形で制作したこと。新劇場版は、様々な新しい作品を考えたもののエヴァンゲリオンを超えることができなかったため、それならばエヴァンゲリオン自体をリメイクしようとの考えが発端のようです。

会場でも一番出店数が多く、人気だったのが「エヴァンゲリオン」のコーナーでした。特に初号機の原案がどんどんTV版のスタイルに変わっていく変遷が見られたのは面白い展示でした。また、新劇場版に登場する新キャラクターのマリの初期案が貴族のような洋装の優しいキャラクターだったのも発見でした。それ以外にも、数多くの資料が公開され、多くのことを知ることができました。

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ところで、「シン・エヴァンゲリオン」はアニメ作品でありながらCGを多用し、上記写真に示すようなシーンではアクターにモーションキャプチャーを取り付け自然な人の動きをアニメ映像に落とし込む試みが行われていたそうです。今思うと、それは特撮とアニメの融合を目指していたのではないかと感じます。これこそが庵野監督が生きてきた軌跡の集大成であるように思うのです。

今後すぐに「シンウルトラマン」や「シン仮面ライダー」の公開が行われるでしょう。その作品のあとに庵野監督の評価はどのように変わるのでしょうか。「シン・ゴジラ」は、これまでやり尽くされた感のあったゴジラに日本の政治に対する風刺を絡めて非常に素晴らしい作品を作り上げたと思います。これからの2作品には、まだ挑戦されていない表現の余地はあるのでしょうか。とても楽しみです。



国立新美術館 庵野秀明展

~12/19(火休) 10:00~17:30(金土~19:30) 一般2100円 大学生1400円

最寄り駅は東京メトロ千代田線の乃木坂駅です。

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