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青森県立美術館 富野由悠季の世界 [青森]

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ガンダムの監督である富野由悠季氏の総合展示です。日本各地の会場をめぐって、当初の巡回展の最後の会場は青森県の青森県立美術館でした。本来ならばもう少し早い時期の開催だったのですが、新型コロナウイルスの影響で開催期間のずれが生じています。

巡回展の開催当初から話題だったため、かなり期待を持って向かったのですが、訪問した日はなんと四月なのに写真のように大雪でした。しかも、バスのダイヤ変更や乗り継ぎ失敗などが重なり、大雪の中2.5kmの道を歩く羽目になりました。運命は雪中行軍のような苦労をしなければ、簡単には展示を見せてくれないらしいです。

展示は口コミ通り膨大で、映像作品を見ないでかなり軽く見ていても3時間かかりました。富野監督の少年時代から虫プロ時代、そして監督作品時代と流れていきます。監督作品は90年代までのプロデューサーの要求に合わせて作る時代とある程度自由に作れる時代に大きく分かれるように感じました。

各作品に込められたものは深く、気付かされるものが多くあります。富野監督作品はそれぞれの作品が実験のような気がし、「アニメは子供向け」と言われないように様々に考えられて、主張が埋め込まれていたように思います。特に70~90年代の作品に魅力が多いのは、企業の執行部に対する作家としての反骨精神の現れのような気がします。だからこそ、最近の作品は牙が抜かれたようで、何か物足りない気もするのです。

同じアニメ制作でありながらジブリ作品などと異なるのは演出家出身だからでしょうか。確かに物語の見せ方は非常に洗練されていますが、ストーリーも示唆に富む非常に優れたものと感じます。一方でアニメーター主体の作品に多いのかもしれませんが、一部の最近の作品にはストーリーで見せるというよりも、動きの凄さ、エフェクトばかり注目しているのを残念に感じます。アニメが一つの主要産業となった今、富野監督のような尖った人材は出現しにくいのかも知れません。アニメ界も勃興期から安定期になっています。例えるならば、ポスト松下幸之助のパナソニックでしょうか。

さて、会場の展示ですが、率直な感想ですと事前に読んだ口コミ以上の新規のものは無かった気がします。新たな感動はなかったものの、一つ一つの作品の記憶が呼び起こされ、感動を含む様々な気持ちが思い出されました。あえて挙げるならば、リ・ガズィのダミーバルーンは一見の価値があります。お台場のガンダムなどは確かに1/1で大きいのですが、コックピットまでの距離が遠くいまいち巨大さが分かりません。しかしながら、このリ・ガズィバルーンはコックピットの部分が目前にあるため、その巨大感を感じやすく、ここから搭乗したのかと感慨深くなります(もちろんこれまでもガンダムフロント東京でフリーダムガンダムのコックピットやバンダイミュージアムのガンダムなどがあったので特別ではないかも知れないのですが、なぜか大きさに嬉しくなりました)。

また、∀ガンダムの最終回の最後の部分は「奇跡の6分間」と呼ばれているのですね。確かに、作品を通してみた人にはそれぞれのキャラクターがなぜそのような行動をしているのか理解できますし、それだけで涙できるエピローグです。ソシエは何故慟哭し吠えているのかなど。すべてのガンダムはこの6分間の映像で終焉させても十分でしょう。であるがゆえに、Gレコが蛇足に思えてくるのです。

本当に観覧してよかったと思えます、確かに新しい感動は殆どありません。しかし、再確認という行為も物事を考えるのに重要なステップであると思います。

美術館を後にする頃には大雪も止み、現れた太陽が雪の平原を強く照らし、それが反射して眩しく目に入ってきました。


青森県立美術館 富野由悠季の世界

~5/9(4/12,26休) 9:30~16:30 一般1500円 高大生1000円(webチケットですと幾分安くてデカチケットが貰えます)

最寄りバス停は青森市営バスの県立美術館前です。

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